下調べの楽しさ
今から13年前の夏だったと思う。当時離婚して計らずも独り身になったボクは、どうせなら独りでしかできないことをやろうと企んでいた。それがクルマに寝袋とキャンプ道具一切を詰め込んである場所(ある地域といった方がいいかもしれない)に行くことだった。ある場所・地域とは、東北地方のことだった。
ボクの一番好きな作家に高橋克彦氏がいて、高橋氏は盛岡出身。当時から東北地方を舞台にした小説をたくさん執筆されていて、ボクはそれらを何回も何回も読み耽っては、東北地方の行ったことのない色々な場所に思いを馳せていたのだ。中でも一番影響を受けたのは、NHK大河ドラマにもなった「炎立つ」や「竜の棺」だった。
大湯のストーンサークルを筆頭に、黒又山、十和利山、キリストの墓、亀ヶ岡遺跡、十三湖、福島城址、唐川城址、日吉神社、荒磯崎神社、三角山、竜飛崎、義経寺、中尊寺金色堂、毛越寺、衣川、達谷窟・・・(日本中央の碑には行けなかった・・・)。東北地方を舞台にした、古代から約1000年前の奥州藤原氏が滅びるまでのロマンをどうしても追い求めたいという衝動を抑えきれず、とうとう独り身で旅に出た。
ここでボクのその時の旅の思い出を津々浦々と書き連ねたいところだが、主旨から外れてしまうので、別の機会に委ねるとしよう(そういう機会があったらだが。それはそうと当時にもブログというものがあったならば、ボクは絶対書いていただろう)
行きたいと思ってから実際に行くまでの間にとったボクの行動は、まさしく「下調べ」だった。仕事から独り暮らすマンションに帰ると、夕食も食べずに(本当に食べていなかったため、血圧はドンっと下がり、病気になりかけた)買い漁った東北に関する歴史や地理や文化などの本を読んでは、重要な部分を父親から譲ってもらった東芝のワープロでパチパチと打ってはジジジジーーーと出力し(当時はインターネットはおろか、パソコンは無かった。少なくともボクの身の回りでは)、旅に出るための資料作りに没頭していた。その期間約半年ぐらいか。
それはそれは楽しいひと時だった。知らなかったことを知るという喜び。準備の中で発見したという驚き。だれからも制約を受けずにただひたすら自分のためだけにある満足感。何せ旅人はボク独りだ。この自分という孤独な旅人を満足させるのは自分自身なのだ。手は抜けない。綿密に計画を練り上げた。仕事以上に完璧な計画。当然ナビなど無いから地図を穴が開くほど見続け、ルートもほとんど暗記してしまった。(最初から東北自動車道ではなく、国道4号線をひたすら北上するルートに決めていた)だから、
― 旅行やデートなどの下調べ、下準備は、自分の楽しみのために、自分一人のためだけにするべきであって、それは本物の旅よりも楽しい。― (ブレインハックス―人生を3倍楽しむ脳科学(佐々木正吾 著)より引用)※オーディオブックより
という著者のいうことは、ボクにとっては何の疑いも無く正しい。脳は、そういう純粋な気持ちから起した下準備や下調べの間中、真実を求め、周辺情報を求め続けるらしいのだ。その「東北歴史ロマン紀行」の下準備下調べの時のボクの脳は、そういう状態だったに違いない。
― 脳は、予測と修正を好む ―(ブレインハックス―人生を3倍楽しむ脳科学(佐々木正吾 著)より引用)※オーディオブックより
本当の旅も、独りだが、気ままに・・・、ということではなく、事前にきっちりと練り上げた行程にもとづき、行動した。現場を踏み、実際の目で見て、「来たんだ」という感慨深い思いを得ると同時に、予め調べていたことで、「きっとこういうところだろう」と予測したことと違った場合は修正するということもあったと思う。ブレインハックスでは、思い出は二人で共有するためのものと言うが、残念ながら当時のボクには、思い出を共有する相手は存在しなかった・・・。
それはともかく、このようなナチュラルハイ状態を仕事の場面でどう作り出すことが出来るのか?それがボクのテーマである。そのためのひとつの手法として、このブログもあると思って、書いている。
感謝。



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