日本の監督
今のボクにとって、ロールモデルともいうべきリーダーがいる。早稲田大学ラグビー蹴球部・中竹竜二監督その人だ。ちょうど前回のブログで、酒井穣さんが書かれた「はじめての課長の教科書」について書かせてもらったが、中竹監督のリーダーシップ論や組織論も、企業での課長の役割とも繋がっていそうだ。
中竹監督は、学生時代、ワセダのキャプテンとして部を率い、大学選手権準優勝の戦跡を残した。ちなみにワセダのキャプテンになる前までは、ただの一度もAチームで公式戦に出たことが無かったらしい。それでも周囲の、当時の中竹監督を推す者が多かったという。そして、クラブ日本一のタマリバクラブの創設にも関わった。ある高校でのラグビー部創設にもゼネラルマネージャーとして関わった。他も含めラグビーへの功績は高かった。にしても、あの「カリスマ」ワセダの前監督・清宮監督(現・サントリーサンゴリアス監督)の跡を任されたのだ。相当に骨の折れる仕事に違いない。周囲の誹謗中傷、部員の反発も想像以上に大きなものだっただろう。それを見事、就任2年目で大学日本一の座を奪取したのだ。そしてまた、次も日本一を期待されている。
どうしてだろう。どうしてそれができたのだろうか。中竹監督の著書「監督に期待するな 早稲田ラグビー『フォロワーシップ』の勝利」を読み進めると、たくさんのヒントがあった。
― 時代や世の中の期待に応えない。これが私の考えるリーダーシップだ。 ―
― スタイルの確立こそが、これからのリーダーに必要な条件だ。 ―
これだけを引用すると、会社や世の中がどうであろうとかまわない、自分流で行く。みたいに誤解されるかもしれないがそうではない。前述でいえば、20人の部下の20人の願うリーダー像全てに応えることは誰にもできないし、それにリーダーシップ像は画一的ではない。また、スタイルとは一貫性やこだわり、「らしさ」という事である。
以前のこのブログでも中竹監督について書かせてもらったが、「戦うべきでないものとは絶対に戦わない」という中竹監督の言葉を紹介させてもらった。ボクの勝手な想像だが、きっと中竹監督にとっての最大の戦うべきでないものとは清宮・前監督だったのではないか?つまり、清宮監督と同じ土俵には立たない、同じことをやっても負ける。清宮前監督は、周囲を圧倒させるオーラがあり、簡単に言ってしまえば「俺についてこい」タイプ(だと思う)。中竹監督が同じようにしても、同じようにはならない。だからこそ独自のスタイル「らしさ」が必要なのだろう。それは弱いからということではない。中竹監督がいうようにスタイルはナンバーワンではなくオンリーワンなのだ。
また、中竹監督は、「日本一オーラのない監督」というキャッチフレーズを自分につけることで自分自身のスタイルを確立していった。非カリスマ的スタイルの確立だ。ワセダの脱・清宮を計ったということだろう。それはまた、リーダーシップよりもフォロワーシップを発揮させるための組織作りだ。リーダーが誰であろうと、誰に代わろうとフォロワー(リーダーの周りにいるスタッフ)がしっかりしていればそのチームは絶対にブレない、潰れないという考え方だ。
そのために、中竹監督は、自分自身へのスタイルを確立させると同時に、各部員とじっくり話し合いながら、納得させながら、部員一人ひとりのスタイルをも確立させていく。例えば、フォワード(FW)の橋本という選手がいた。その彼に、同じFWでもプロップ(スクラム最前列)からロック(長身・スクラムの背骨)へと違うポジションにコンバートさせ、見事開花させた。ディフェンスのスキルが急上昇した田邊という選手を、芽の出なかったバックス(BK)のポジションのフルバックやスタンドオフからセンターへ転向させ、ディフェンス力強化に成功させた。もちろん本人達も満足してのびのびと与えられたポジションで身体を張っている。つまり、一人ひとりの得意な部分を発見し、よりさらに上を目指させ、選手も納得・満足して戦っている。チームもより強化された。
これは、一人ひとりのモチベーションの向上と維持という部分にそっくり当てはまる。「課長の教科書」に書かれていたことと同じだ。ただ頑張れ、やる気を出せ、では無い。一人ひとりの可能性を見出し、今よりももっと高みを目指せるよう、一人ひとりとじっくり話し合いながら新しいこと・新しい仕事にチャレンジさせ、そして成功させる。モチベーションの管理とはこういうことを言うのだろうと思う。
さらに、試合では、選手達にマッチ・スローガン(テーマ)を与えている。ある日の試合では「ノーラックラグビー」ラックに持ち込まず、立ったままプレーしてボールを継続させる。倒れない戦い方だ。またある試合では「連続コミュニケーション」、また「原点回帰」、「チーム・コンセンサス」などなど。試合の出来不出来は、勝ったか負けたかという点数上のことのほかに、このマッチ・スローガンの到達点も評価される。ビジネスの世界でも、プロジェクト1つ1つにマッチ・スローガンがあってしかるべきだ。ところが、テーマや課題が無いままに、やることそのものが目的になってしまうシーンのなんと多いことか。そこに重要性を見出せない、見出そうとしない上司についてしまえば、きっとスタッフのモチベーションは上がらないだろう。今までボクはどうだったのか。部下を持った経験はもちろんあるけれど、モチベーションという部分に一歩踏み込んで考えをめぐらせていたのだろうか。そう振り返ると怖い。
最後に来シーズンのワセダ、中竹竜二監督の采配に注目したい。
感謝。
この色の文章は、「監督に期待するな 早稲田ラグビー『フォロワーシップ』の勝利」(中竹竜二著)より引用。



最近のコメント